弾性率測定法の潮流
弾性率の基本は材料試験機による応力/歪み曲線を求める方法ですが、測定には熟練度が要求され1点を測定するにも長時間を要し、そのうえ、ばらつきや偏差が大きいために、ほとんどが動的測定法を採用されています。そのなかでも共振法が一般的となっており、精度の面で自由共振法(弊社製品では JEシリーズおよびJGシリーズ)が最適な装置です。しかし難共振材や高温測定(後述)では大きな間違いをしかねないところに欠点があります。
自由共振法でも加振方法や検出方法によって性能が違います。弊社の自由共振法は、加振、検出ともに全くの非接触で試料の保持も振動しない節の位置で支える、という誤差要因を最小にする測定方法を採用しています。最近は有限要素法などのシミュレーションに対する要求精度が高くなり、旧式の自由共振法の装置からの買い換えが行われています。
測定における基本
動的測定法だけでなく、材料試験機などを使用する静的測定法においても測定の基本は、試料は等方性である、ということには変わりがありません。共振法において、弾性率は共振周波数(振動数)と試料サイズから計算しますが、材質の均一性と試料の振動部の断面が一様である、ということを前提にしています。一見、材料試験機では異方性を問題にしない、というように見えますが、曲げにしても圧縮にしてもいちばん歪みが大きいのは弱い部分であって、それが全体の弾性率を示していることにはならないからです。
材料がどのような異方性を持っているかによって、測定法を選択し、データの評価(値の使い方)をする、ということが必要です。
共振法の強み
共振法の強みは、電気回路における安定度をきめるアナログ値(強度)を使わない、ということです。弾性率の測定は周波数測定であってこれはデジタルです。周波数回路は時計の精度でもおわかりのように簡単に高精度が実現できます。周波数から弾性率を計算したときに、周波数回路では桁外れの誤差でも弾性率を計算したときには問題ない誤差となります。
内部摩擦測定には減衰法や半価幅法を使用し、その時はアナログ値を使用しますが、短時間内の相対的な変化ですから、電子回路上一番問題になる絶対値の安定さや長期安定さが不要です。
同時に、基本的に共振振動数(共振周波数)を求めるだけですから、経験を要するテクニックは殆ど不要です。特に外乱の入りにくい自由共振法は優れた方法で、そのなかでも弊社JEシリーズやJGシリーズのように試料の振動を阻害する要素のない測定法では特に優れています。
ただ、この自由共振法も高温で共振が得られにくくなったり、偽振動が生じるなどの弱点はあり、この場合は超高温でも一次振動が容易に得られ、安定した自動測定ができる片持ち方式(EGシリーズ)がお奨めです。
試料と測定の目的にあった測定法(共振法では試料保持方法)を組み合わせることが必要です。
内部摩擦測定の潮流
金属における内部摩擦測定はいまや常用的な測定としての位置を占めています。最近の研究で最もよく用いられているのは制振材料開発における制振性能の評価です。内部摩擦測定に関しては国際的なコンファレンスとして4年ごとに開催され、国内の主立った内部摩擦の研究者は参加しているICIFMS(International Conference of Internal Friction and Mechanical
Spectrometry)があります。最新の会議は3年前に京都で開催されましたが、そのときの発表ジャンルが内部摩擦の潮流を示していると思いますが、上位にランクされていたのは、1結晶中の点欠陥、転位,界面で2番目が実用工業材料(弾性、擬弾性、溶質原子の挙動、以下非晶質材、ナノ薄膜、制振材、生体と続いていました。上位のものは内部摩擦利用としては常用化され、下位のものは萌芽期といえそうです。→NTPたより
第15回 ICIFMは2008年にイタリアで開催されます。
減衰性能のデータ
かつて、制振材料のカタログに減衰曲線が記載され、いかにも制振性能が高いようなデータと思われていましたが、いざ使用しようとすると思った性能がでなかった、という経験を持たれた方も少なくないと思います。
この大きな理由は、減衰性能が周波数や振動の大きさ(歪み)によって値が違う、ということが原因です。ですから、現在は周波数依存性や歪み依存性を測定するようになってきました。これらの測定には測定方法によって制限がありますので、詳細はお問い合わせください。
高温測定の問題
以前から弊社では警鐘をならしていましたが、最近材料研究者もお気づきになられたようです。それは自由共振法や超音波法で1000℃あたりから急変するはずの弾性率が変化しないデータとして報告されていることです。
1000℃以上の機構として自由共振法や超音波法が製品化しやすいのですが、注意が必要です。最近、海外で競合となったヨーロッパ製品は自由共振式インパクト加振法で1500℃測定データがカタログに記載されていましたが、物性的に信じられないでたらめな測定データでした。弊社EGシリーズによる高温測定の確かさを再認識しました。
異方性材料の測定
静的測定法にしても動的測定法にしても測定の基本は等方性材料です。しかし、現実には大小の違いはあっても異方性材料がほとんどです。以前は等方性と思われていたステンレス薄板も製造方法によっては圧延方向によって配向性が異なり、材料の圧延方向とその直角方向では弾性率が違う、ということは常識になっています。
意識的に貼り合わせた複合材などの構造が特定できるものは、複合則で測定計算も可能ですが、多孔性材料や樹脂と金属粒子の混在したものなどの正確な弾性率測定(内部摩擦測定は可)は困難です。結局、力が試料のどの部分に一番大きな歪みを与えているのか、などと考えることによってどのような測定法が適しているのかを考える必要があります。そのようななかで製品の管理として相対的な値を用いている、という使い方も行われています。
発表データ
学会発表や論文にはきれいなグラフやデータが掲載されています。ご経験のない方はこのようなデータが簡単に採れると思われているのではないかと思います。なかにはそういうデータもあるかと思いますが、結構何回も測定し、ようやく得られたものや、データに補正を加えられたものなども少なくありません。私どもは常に難測定に挑戦し、いかに簡単に測定できるかを常に模索し、開発、改良を加えていますが、非常に共振しにくい材料や異方性材料などの測定には原理と計測を理解した測定技術が必要なこともご理解ください。
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